疾病要因の一因子と多因子によるカテゴライズ
Categorizing about disease factor (one factor / multi factor )
疾病要因は一因子と多因子に分けられる。
一因子は感染症など、因子をひとつの因子と考えられるもの、(分子的には多因子だが、感染要因を消すことにより、疾病を確実に予防可能なもの) 多因子は癌・リウマチなどに代表される生活習慣疾病のような多因子として考えられるものに分かれる。
医薬においての一因子疾病と多因子疾病の違い
一因子
一因子の疾病は、その要因を取り除くだけで疾病の防止を可能である。 微生物による感染症などは微生物を取り除く事で進行を食い止めたり予防する事が出来る。
多因子
一方、多因子要因については、少し複雑になる ひとつの薬で多因子によりおかしくなっている生体システムを治すことは困難であるのは明白である。 なぜならば、多因子をひとつの薬で制御しづらいから。(いかに抗体技術などを用いてもDDS技術などが発達しなければ難しい。) 癌や、リウマチ、糖尿病などはその原因をひとつに突き詰められるとして、 研究されてきたが、実際は免疫系や成長因子、細胞応答系の分子が生体システムとして、 かなりおかしくなっている状態であると言える。 特に進行した癌は実は癌細胞だけがおかしいのではなくて、 潜在的に癌細胞を産生する間違った(歪んだ)システムが常に存在し続けられる様な常態に 維持されている事が最大の問題点となっていると理解するのが良い。 多段階・多因子により歪んだシステムは徹底的に多段階・多因子をターゲットにして、 薬剤を投与し間違った(歪んだ)生体システムを正しい方向に押し戻す作用を持った、 ものを複合的に利用すべきである。
多因子疾病の治療法(分子標的)に対する考え方
特に進行癌は(IL-6, IL-4 etc…) 発生・血管新生系異常(EGFR, VEGR etc…)、Kinaseシグナリング異常 (PPAR,mTOR,KRas etc…) 、DNA読み取り異常、 カドヘリンなどの生体接着分子の異常等々、複数の生体分子異常が見られる。 治療法としては多剤投与と併せて、これらをどの順番に押し戻して行くかという(いわばボタンの押し順を考える)様な治療法も有用であるのではないか。 更に、システムの異常はひとつの種類ではないと言うことも考えねばならない。何の因子の異常で疾病が起きているかを考える事で、 この疾病状態を正常な状態に押し戻す治療法は真価を発揮するといえよう。 大腸癌などにおける、OPUS試験やCRYSTAL試験はその一部を実行していると考えても良いと思う。
日本の伝統的創薬は一因子に強い
創薬研究者、医療従事者でさえこの二つの違いを理解していない人も多い。 日本の製薬会社は、抗生物質の発見を中心に疾病と闘い、勝利を収めてきた。 この点が逆に現在の癌やリウマチ、欝などの精神疾患に代表されるような難治性の多因子疾患への創薬を遅らせて来た要因と、 なっているのではないだろうか。 一因子に強いという強みを今後活かしつつも、多因子疾病にも柔軟に対応出来る創薬研究が今後の急務だと考察する。